けれども青い鳥は、長いあいだ木のほらのなかにとどまらず、空に飛びたった。
えんえんと飛んでみずからの王宮につくと、やぶれたまどから入りこみ、自分の宝石箱を見つけて王女におくるごうかなダイヤモンドの指輪を取った。
フィオルデリーサは青い鳥がもどるまでずっと、ひらいたまどべにすわって待っていたが、鳥が指輪をわたすと、
「いけないわ、わたしのためにこんなあぶないことをするなんて」
と、やさしく鳥をしかった。
「いつもこの指輪をはめていると、約束しておくれ」
青い鳥は言った。
「ええ、約束するわ。あなたが夜と同じように、昼もわたしに会いにきてくださるなら」
こうしてふたりは夜どおし語りあった。
あくる日もまた、青い鳥は王宮へ飛んでゆき、こわれたまどから城にしのびこみ、宝石箱から二本のブレスレットを選んだ。
それぞれがエメラルドのかたまりからほりだしてつくられたものだった。 青い鳥がそのおくりものをわたすと、王女は首をふりながら、とがめるように言った。
「わたしの愛がそんなにまずしいと思っていらっしゃるの?このような品物をみな受けとらないと、あなたをわすれてしまうとでも?」
「いや、姫よ。そうではない。わたしはあなたを心の底から愛している。だからいつもあなたを思っている証拠に、
こうして価値もないささいな品を運んでくるしかなすすべがないのだよ。たとえしばらく、あなたをひとりにしておかなければならなくても」
つぎの夜、青い鳥がフィオルデリーサにとどけたものは、ひとつぶの真珠にはめこまれた時計だった。
王女はちらりと目をやってかすかに笑った。 「時計をくださるわけがわかるわ。あなたとお会いしてから、わたしには時間がわからなくなったのです。
あなたと過ごす時間はほんの数分のようだし、あなたなしではなかなかすぎていかない時間は、まるで数年のようですもの」
「ああ、姫よ、その時間はわたしのほうがずっと長く感じているのだよ」
来る日も来る日も、青い鳥は王女のために、ダイヤモンドやルビー、オパールなど、もっとたくさんの美しい品々を運んできた。
王女は、夜には、それら身につけて青い鳥を楽しませ、昼はわらのマットレスの下にかくしていた。
太陽がかがやいているあいだ、青い鳥はモミの木のなかにひそめ、王女のためにうっとりするような歌をうたった。
そのため、通りかかる人々はふしぎに思い、「モミの木に精霊が宿っている」とうわさしあった。
*ロマンチックなお姫さまを執筆されたオーノワ夫人のラブスト―リーのひとつです。
原作のおはなしがあまりに素敵なので、そのまま本文を引用させていただきました。
どのカードもはじめて手にふれたときうれしいものですが、このカードに出会えたときはとくにうれしかったことをおぼえています。
もっとも忘れられなかったシーン、贈り物を届ける王子と、鳥になった王子に手をさしのべるフィオルデリーサがいたからです。
せりふも印象的で、陰謀に貶められ、はなればなれになっても愛しい相手を想いあう王子と王女に心ひかれます。
ふたりとも王族なのに不幸続きで苦労するので、読むたびについ励ましの声をかけてしまう物語。
数々の宝石、塔に幽閉される王女、悪の魔法使いと、ファンタジーのおもしろさたっぷりで魅了されました。
ところで、青い鳥といえば、メーテルリンクの幸せの青い鳥を探すチルチルとミチルの旅のおはなしも有名。
もちろんあちらの青い鳥も幼いころから愛読書で、今でも大切に読んでいます。
出典:アンドルー・ラング世界童話集第3巻
みどりいろの童話集