暗い夜のなかを、おどって行きました。
くつは、いばらだろうが、切株だろうが、どこまでもおかまいなしに、カーレンをひっぱって行きました。
こうして、いつのまにか、荒れ野の上をおどって行って、とある一軒の、さびしい家の前にきました。
この家には、首切り役人が住んでいることを、カーレンは知っていました。
カーレンは指で窓をたたいて、なんどもいいました。
「出てきてください!--出てきてください!---わたしは、はいって行けないんです。おどっていなければならないんです!」
『アンデルセン童話集』大畑末吉 訳 P.132より
「どうか、わたしの首は切らないでください!」とカーレンはいいました。
「でないと、罪をざんげすることができなくなりますもの! そのかわり、どうぞ、この赤いくつごと、わたしの足を切ってください!」
そしてカーレンは、罪をすっかり告白しました。
そこで、首切り役人は、赤いくつごとカーレンの両足を切り落としました。
すると、そのくつは、畑を超えて、ふかい森のなかへ、おどって行ってしまいました。
『アンデルセン童話集』P.133より
じつはわたしは子供のころカーレンがそれほど悪いことをしたように感じられませんでした。
このブローチを胸元につけるとカーレンを思い出し悲しみに浸りながら踊りたくなります。
小さなアクセサリーにもかかわらず大きな存在感があります。
日本の童謡の『赤い靴』も寂し気な歌詞とメロディで、この童話とどこか共通しているものを感じます。
赤は血の色、薔薇の色、唇の色、紅玉の色、火の色。そして罪の色。
カーレンの美しい靴の色。