人形姫2



白鳥が恋い焦がれるなにも語らない姫は、森から続いている卵色の小道を歩いて行くと見えてくるサーナという国で生まれた。
サーナ国の王子はとても優しく、勤勉で、生まれた時から民に愛されていた。
また王子も身分を問わず民を深く愛している人物だった。
誰にも平等で、動物や虫さえも王子を見ればこうべをたれるほど深く尊敬していた。
王子と結婚したいと願う娘は世界中に砂漠の砂の数ほどいた。
けれど王子は心から愛しいと思える女性になかなか巡り合えなかったので、結婚の申し込みがあってもいつもていねに断りの返事をいれていた。


そんな王子が恋をしたのは21歳の誕生日のことだった。
王子は隣の国の王の新しい宮殿ができたというので祝賀会に出かけたとき、宴もたけなわになるころこっそりひとり抜け出したい気持ちになった。
そこで闇夜にまぎれてふつうの若者の服を着て街に出かけた。
さまざまな物売りや踊る女たちをすりぬけて歩いていると誰かがかごを持ってすっと寄ってきた。
その瞬間王子はうまれてからいちども感じたことのないはげしい想いにとらわれた。
貧しいけれどとてもうつくしい花売りの少女に出会ったからだ。
「そこのお方。よろしければ、ばらはいりませんか」
そういってほほえむ少女ははなれがたい魅力を持っていた。
王子はふるえる手で少女に銀貨をわたした。
そしてお礼をいって去る少女のうしろをこっそりついていった。
すると少女は王子から受け取ったお金をパンにして、さらに自分より貧しい人々にわけてしまった。
その光景を見た時、王子はもはやこの人しかいないと感じた。
結婚を申しこむととつぜんのことに姫はとまどっていたが、噂のとなりの国の優しい王子だとわかると「はい、お望みのままに」と返事をした。
王子は少女を連れて帰って、愛する人を見つけたと王様に言った。
はじめは反対していた父王と妃だったが王子の固い決意を知ってやがて結婚を認めることにした。
ふたりは喜びにみちあふれて結婚式をあげた。


back