仙女はシンデレラにこう言った。
「さあこれで舞踏会への馬車とお供の準備はできたね。満足かい?」
「はい」とシンデレラは感に堪えぬ様子で答えた。
「でも、こんなみすぼらしい格好で舞踏会に行ってもよいものでしょうか」
それを聞くやいなや、名付け親の杖はシンデレラの身体に触れた。
それと同時に、彼女の服はたちまち金糸銀糸に彩られ、宝石が贅沢に縫いつけられたドレスに早変わりした。
それから名付け親は、彼女にこの世でもっとも美しいガラスの靴を与えたのである。
こうして身支度が整い、シンデレラはいそいそと馬車に乗り込んだ。
しかし名付け親は忠告を与えた。真夜中を過ぎてはいけない、と。
もし真夜中を過ぎてなお舞踏会に居残ったりすれば、馬車はかぼちゃに、御者は二十日鼠に、従僕は蜥蜴に戻って、
ドレスも元のみすぼらしい服に戻るから気をつけるように、と念を押した。
『ペロー童話集』シンデレラ、あるいは小さなガラスの靴(荒又宏/訳 ハリ―・クラーク/絵)P.103より
シンデレラは子供のころいちばんすきなお話でした。
リボンやレースのついたドレスをきて、輝くガラスの靴をはいて、かぼちゃの馬車で舞踏会にいってみたいなあといつも想像していました。
教訓 うつくしさは女性にとって最上級に称賛される財産で、
みながみつめつづけて飽きることはない。
しかし善意と呼ばれる稀な徳こそが
うつくしい顔などよりもはるかに尊いものなのだ。
その永続的な魅力は何物にも勝る。
『ペロー童話集』P.111より